地鉄の日車ロマンスカーとその現状(10020形・14720形)

日車ロマンスカーといえば、真っ先に思い出されるのは

3000形から始まる小田急ロマンスカー

7000系に代表される名鉄のパノラマ一族でしょう。

 

今回取り上げるのは、それら大手私鉄で活躍したものではなく

地方私鉄で活躍し、一時代を築き上げたグループです。

 

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1950年代後半以降、名鉄5000系を手本とした2扉クロスシートの車両が

日本各地(とりわけ中部地区)の地方私鉄に次々と誕生しました。

これらを総称して「日車ロマンスカー」として扱います。

主な形式を登場年代順に挙げると…

・富士山麓電鉄3100形(1956年)

長野電鉄2000系(1957年)

秩父鉄道300系(1959年)

福井鉄道200系(1960年)

富山地鉄10020形(1961年)

富山地鉄14720形(1962年)

北陸鉄道6000系(1962年)

北陸鉄道6010系(1963年)

これだけの車両が、各地へと散って活躍していました。

 

 

時は流れて2014年。

登場から半世紀以上の時を経た今、

現役で稼働している「日車ロマンスカー」は

福井の200形と富山の20形列だけとなってしまいました。

 

しかしながら貴重な生き残りであった

福井の200形は既に置き換えが決定。

このままでは一族が過去帳入りする日も遠くはなさそうです

(逆にまだ残っていることが奇跡と言えるのかもしれません)

 

モータリゼーションが起こる以前の、

昭和中期の地方私鉄の栄華を今に伝える貴重な存在。

それがこの一族だと私は思っています。

福井鉄道は既に何度か訪れていましたので、

今回は年末年始の時間を使って富山地鉄の20形を訪ねてきました。

 

※ちなみに20形といいつつ、実際には10020形と14720形の2形式があります。

地鉄は頭3桁が主電動機の出力(PS)数を表し、下2桁が系列を表します。

この2形式は主電動機の出力や編成構成などを異にする兄弟のような関係なのです。

 

 

さて、地鉄20形の話です。

先に記したとおり、富山地鉄には現在10020形と14720形という、

2形式の「日車ロマンスカー」が在籍中であり、

さらに14760形というこれまた自社発注のロマンスカーも活躍しています。

地方私鉄では近年、大手私鉄の中古車両を導入する動きが

以前にも増して活発化しており、特に鉄道線の電車に関しては

自社発注車が走る会社は殆どなくなってしまいました。

それはここ富山地鉄も同様で、

京阪3000系や西武50000系、東急8590系がここで余生を送っています。

これらの要因により、ここ数年で20形列の運用は激変しました。

 

まず10020形。

こちらは元々3編成あったものが2007年までに第1,2編成が廃車されました。

以降は第3編成のみとなって久しく、

主に制御車クハ170形を増結した3両編成で朝の上滝線運用についていました。

しかしながら昨夏に京阪から2階建て車両が導入されると、

あっけなく置き換えられてしまい運用離脱。

稲荷町で留置されることが多くなりました。

しかしながら11月、突如として朝の上滝線に1往復だけ、

しかも火曜~金曜のみという限られた条件ながら運用が復活。

2014年1月の時点では上記曜日の607~608列車に充当されています

(金曜のみ本線・上市駅までの運用も1往復あるとのこと。ただし当方は未確認)

 

そして14720形。

こちらはずっと2編成が在籍して運用を続けてきましたが、

2年前の1月に14721Fが出火事故を起こしてしまい、休車に。

それ以降は14722Fのみの孤軍奮闘が続いています。

なお10020形とは異なり、こちらは日中も運用されています。

 

ということで、今やかなり限られた条件でしか見ることができなくなってしまった

この20形たち。1週間富山に滞在し、その姿を見届けてきました。

 

 

14722F 上滝線・月岡~大庄 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

まずは14720系を。

この時期の富山はまず滅多に晴れないと聞いていたのですが、

今回の滞在中は予想外の好天に恵まれることが多かったです。

 

 

 

14722F 本線・東新庄~越中荏原 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

 

 

 

 

14722F 本線・越中舟橋~越中三郷 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

 

 

続いて10020形。

こちらは運用の特定はできているものの、

朝の1往復だけとあって当然ながらチャンスが限られます。

さらに10025号車が先頭になる上り608便は光線状態も最悪なため、

撮影するなら曇りの時がベストでしょう。

 

 

 10025F 本線・電鉄富山稲荷町 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

実はてっきり運用離脱していると思い込んでいたため、

この写真を撮った時に初めて10020形が復活していたことを知りました。

事前学習が足りませんねぇ…

 

 

 

10025F 本線・電鉄富山稲荷町 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

お勤めを終えて稲荷町に入庫。この後は明日の朝までずっと待機。

何しろ勤続50年を超す大ベテランで、

しかも地鉄は山登りもかなり過酷です。

今この車両が走っている不二越・上滝線は

立山線や本線の東側に比べれば平坦ですが、

それでも月岡から岩峅寺にかけてはずっと登り坂が続きます。

そんな線路を半世紀も走り続けてくれば、

ガタが来て当然のことでしょう…。

 

もう残されている時間は多くないと思います。

この丸顔に会えるのは、今が最後のチャンスでしょう。

 

そして。折角の機会なので、最終日に乗車してきました。

 

10026 本線・電鉄富山 camera:K-5+DA★16-50mmF2.8

クロスシートがずらりと並ぶ車内。

こんな車両に会えることも、今ではめっきり少なくなってしまいました。

 

 

 

 14761F:10025F 本線・電鉄富山 camera:K-5+DA★16-50mmF2.8

出発前のひととき。後輩である14760系のトップナンバーと並びます。

このあと月岡まで乗車しました。

 

上滝線は交換設備を極限まで減らしてしまったため、

朝のラッシュ時でも30分間隔までしか増発ができません。

しかしながら沿線には学校がいくつか存在し、

また南富山以遠では平行する路線もないため、

全線で唯一3両編成の定期列車が設定されているのです。

今回の乗車でも、この列車が貴重な通学の足として利用されている様子が伺えました。

 

 

 

10025F 上滝線・月岡 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

モーターの唸りを残して、立山の峰に通じる坂道をゆっくりと登って行きました。

 

 

 

10025F 上滝線・大庄~月岡 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

最後は生憎の雨の中、軽やかな足取りで坂を駆け降ります。

 

 

最後に3両編成のしんがりを務めるクハの姿を。

 

 クハ175 本線・電鉄富山稲荷町 camera:K-5+DA★50-135mmF2.8

去年の春までは10020形と同じ車体の

(元をただせば10020形の中間車を魔改造したもの)

クハ173,4と編成を組んでいたのですが、

それらが老朽化のため休車となってしまい、

今は14760形と同時期に製造されたクハ175と編成を組んでいます。

 

以上、駆け足で地鉄の20形兄弟の現状についてまとめてみました。

先に書いた通り、どちらも老い先はもう長くない状況です。

また、北陸新幹線の開通に伴って富山県内の鉄道事情は

大きく変貌を遂げることが間違いない情勢です。

少しでも気になったら、

手遅れになる前に訪問されることを強くお勧めしておきます。

 

 

富山地鉄、とても楽しいところなんですよ。

 

次回以降、別の視点から地鉄にアプローチしてみます。